パトレイバー2の解説

こんにちは。このブログでは主にアニメの個人的な見解を書きます。一回目はパトレイバー2です。見ていない方は見てからがいいですよ。

ここで解説するのは主に二つ。戦後という幻想と映画とは何なのかです。

この映画ではまず二つの危機が起きていることに注目。一つは柘植の架空のテロ。もう一つは水面下の危機。すなわち、今の日本の現状です。

最初の柘植のテロの面白いところは人を一人も殺さないこと。そして政治的な目的もないことですね。ここが架空とか幻想とか言われる所以ですね。ただ戦争という状況を作り出すことで人々に自分のメッセージを伝えたかったということです。

もう一つの危機は日本の現状ですね。この映画ではここが大事です。これが柘植せ(というか荒川)のメッセージとなっています。それは戦後という幻です。ここではそれを三つの点で解説します。

1暴走する官僚組織

第二次世界大戦では関東軍の暴走により、日中戦争がはじまりました。パトレイバー2ではこの軌跡をたどるかのように、警察組織が暴走します。その暴走が、自衛隊との対立を煽ることになり、事件の原因となります。私たちは戦後日本は穏健な官僚組織を持った平和な国という幻を抱いていたのです。あと馬鹿な親分をもって苦労するのも共通点と言えば共通点。

アメリカとの戦争

柘植のテロを裏で操っていたのはアメリカでしたね。アメリカの狙いは柘植の企てによって、日本が混乱に陥って、「もう自衛隊ではどうすることもできない!」、となった時に出動してついでに、占領範囲を広げることでした。これは荒川と後藤さんの電話での会話で明かされていますね。日米は仲良しという戦後の否定ですね。

3東南アジアは未だ最前線

柘植がオープニングで戦っていたところは東南アジア某国と紹介されていました。そして荒川のセリフで「日本が単なる戦線の後方である」と言われています。つまり二次大戦時に前線となっていた東南アジア諸国は未だに日本にとっては最前線であるという事です。日本軍の占領は終わったとはいえ、そこに国連組織として派遣された、日本の自衛隊がいます。更に、その過激な武装勢力組織が東南アジアに広がればアジアの不安要素が増えることになり、日本にとってはピンチ!(北朝鮮みたいな。)つまり日本は日本を守るためにも東南アジアに国連という形で軍を送っているのです。これが日本の戦後の平和という幻想と、戦争という現実となって、対比されています。さらに他国の戦争で犠牲をという代価を払わせ、自国は平和を享受し、戦線の後方はいつまでたっても身に迫る危険に気づかない。まさに戦時中の勝ってる時の日本ですね。

以上三つのポイントでした。まあこれ以外にも映画にはいろんな説明があるので異論はあるとは思いますが。とにかく平和な戦後ってのは嘘だったという事です。だからこの映画のメッセージってのは「この国はもう一度戦後からやり直すことになるのさ」ってことだったと。

次に柘植と映画監督の関係を解説します。柘植の行ったテロ、すなわち、受け手は絶対的安全な場所において最高度のスリルと危機感を体験しメッセージを受け取る、とはまさに映画であると言えます。つまり柘植は自分のメッセージを言葉や文章ではなく実際のテロで伝えようとした映画監督の立場にいるのです。そして柘植の終盤のセリフに注目!「ここからだとあの街が蜃気楼に見える。」これは自分があまりにも映画という幻の世界に入りこんでてしまったがゆえに周りの人たちが逆に幻の中に生きているように見えるということです。私はこんなに大事なことを知っていて、伝えようとしているのに誰も耳を傾けず、尋常な日々を過ごしていく。そんな光景を見て柘植から出た一言ではないでしょうか。そしてもう一つのセリフ。ラストですね。「この街の未来をみたかったのかもな」。これは僕が先日ユーチューブで見た動画の宮崎駿監督のゲド戦記の感想を思い出させます。「気持ちで映画をつくっちゃいけない。世界を変えるつもりで作らないと。まあ、変わんないんだけど。」どうせ自分が伝えたって、それで世界が変わるわけでもない。だけど、それじゃあ、作品を作る意味はないわけで。99パーセント変わらないかもしれないけど、もしかして、1パーセントでも変わる可能性があるかも。そう思って初めて作品は生まれてくるものではないでしょうか。

パトレイバー2は押井監督の映画の中でも一番好きです。なのにみんな攻殻機動隊ばっかで寂しい。